5月12日の夜。友人である手塚マキさんから連絡があった。
内容は、新宿歌舞伎町にあるデカメロンで予定していた展覧会が「飛んでしまった」から、代わりに何かやってくれないかという依頼だった。手塚さんからのラインメッセージには、「トー横キッズになってよ」という、パンチの効いた誘い文句があった。
そこで、僕は「トー横くさり暮らし」をすることにした。今も新宿東宝ビルの横、通称「トー横」には、行き場のない、様々な事情を抱えた老若男女が集っているという。同じように大阪では、大阪ミナミのグリコ看板の下、「グリ下」がそのような場になっているらしい。自分の居場所がそこにしかないと感じる人たちが、大勢いるわけだ。鎖でつながれて暮らすのに、これ以上の場所はない。
今回は、2018年の「にんげんレストラン」でのパフォーマンス、《人間の証明①》で行ったような「物乞い」だけで暮らすことはしない。裸からスタートするわけでもない。「トー横キッズ」たちと同じように、「トー横」という場所に「つながれている」だけ。だから、鎖の長さはデカメロンの2階の柱から、ちょうどトー横の通りに出れる長さにする。風呂に入るような自由さはないが、それも彼らと同じだ。しかしながら、誰かの援助は求めたい。酒は下の酒場でめちゃめちゃ奢って欲しい。たぶんそれも彼らと同じだと思う。
もはやキッズと呼ぶに値しない年齢の僕だが、貯金残高13円(5月13日現在)の貧困仲間を、キッズは受け入れてくれるだろうか?はじめて「トー横」に漂着したキッズのように、出たとこ勝負で暮らそうと思う。
『緊急代打企画!トー横くさり暮らし』
アーティスト:松田修
会期:2023/5/16~5/20
会場:デカメロン