「ヒト以外であったときの記憶」を中心にインスタレーションが構成される。

・私は顔貌性なしであなたに触れ、あなたがあなたであるということを、すっかり忘れ去ったまま、あなたを尊重し、あなたと共に生きることができるのか。

・私はゾンビに接吻を交わすことはできるのか。あるいは、私はゾンビとして、同様にゾンビになりゆくあなたを抱きしめることはできるのか。

デカメロンでは、先天性両耳重度難聴という背景を持つキュレーター・waxogawaによるキュレーション展「kɯ̟ᵝzɨᵝɾe̞^崩れ」が開催される。

参加作家は太田遥月、山田響己、古川諒子、橋爪志保。本展ではサウンドインスタレーション、平面作品、パフォーマンス、短歌などが織り交ぜられ、もはやヒトを対象とはしない原風景が現れてくる。
本展に寄せて、waxogawaは次のように語っている。

あなたの顔を喜ばしくすっかり見失いながら、光の方へ溶けゆくあなたをこれ以上なく適切に、齟齬を孕んだまま、抱きしめることである。顔貌性と秩序は近しい関係にあるが、顔貌性なしであなたに触れることは、予見可能性を持たずに、詩としてあなたに邂逅することでもある。このとき私たちの存在は詩であり、声であり、反響であり、芸術の存在論そのものになる。関係性——私はなぜここにいるのか？　あなたに触れるためである——から立ち上がってくるそれは、ファルス的でなく、権力構成体でなく、演劇的でもない。ただ純然として、そこに存在しているという確さがあって、私が繰り返しここで考えようとしている「ゾンビ」の内実がここにある。（部分抜粋）

●開催概要

「kɯ̟ᵝzɨᵝɾe̞^崩れ」

会期：2023年1月19日〜30日
月：18:00～24:00
火～土：16:00～26:00
日：16:00～24:00
※(1F一刻の営業に準ずる)

アーティスト：waxogawa、太田遥月、山田響己、古川諒子、橋爪志保
インストーラ：太田宗宏

開館情報
⼊場料 500円
会場 デカメロン160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1-12-4
電話番号 03-6265-9013

●プロフィール

waxogawa

2001年生まれ。キュレーター。慶應義塾大学SFC在学中。先天性両耳重度難聴という背景から抱える言語に対する執着心をもとにキュレーションを行う。
展示に「cubed of conjunction」（新宿眼科画廊、2022）、伊藤道史「私であることの試み／CONATUS」（NEORT++、2022）など。

太田遥月

1999年、岡山県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学中。土地や自然環境に漂う音や空気を取り込み、自然の作用によって形成される物質の記憶や軌跡、循環を生み出す。
「身体アンデパンダン展」（TOMO都市美術館、2021）、RAU2021「都市と芸術の応答体」など。

山田響己

2000年、熊本県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部在学中。他者や物質との関係のなかで融解する場的な身体感覚を手がかりに、パフォーマンスやインスタレーションを制作。
感触あるイメージを空間へと気化させることで存在について考察する。 主な作品発表に「平らに稽古するだけ」 (早稲田小劇場どらま館, 2021) 「POOL (仮構作用)] (nose art garage, 2022) など。

古川諒子

1994年生まれ。2020年広島市立大学芸術学部油絵専攻卒業、22年広島市立大学大学院芸術学研究科油絵研究博士前期課程修了。作品とタイトルの相互関係に着目し、タイトルの生成を起点に絵画を制作している。
主な個展に、「太平洋は銀製」(ヒロセコレクション、広島、2023)、「回る羽根を切る / 貼る 」(MONO.LOGUES 、東京、2022)、「私の知るX夫妻について」（gallery RYO、東京、2021）など。
滞在制作に「ニュー・リアリティ」（アートギャラリーミヤウチ、広島、2021）。グループ展に「ひとりとひとりの間に 」(ARTDYNE 、東京、2022)、「grid」（biscuit gallery、東京、2022）、「SLANGS」（WHAT CAFE、東京、2021）など。

橋爪志保

1993年、京都に生まれる。2013年、京大短歌会に入会し、作歌をはじめる。
2020年、第二回笹井宏之賞にて、永井祐賞(個人賞)受賞(「とおざかる星」50首)。2021年、書肆侃侃房より、第一歌集『地上絵』上梓。現在、同人誌「羽根と根」「のど笛」「ジングル」所属。